「こんなところがあったのか」
アレックスは目を丸くした。
コロニーの最底部へと続くシャフトをエレベーターデ下っていると、眼下に巨大な空間が現れた。
「ここは、前大戦後、新しくつくられたZAFTの軍事拠点です」
シンは、ものめずらさから、辺りをきょろきょろ見回している。金属の壁面でわれた空間のしたには、戦艦が二つほど止まっていた。どちらも小型のものだった。
「あれが、今回俺達が乗っていく戦艦?」
シンが尋ねると、ミーアは、首を縦に振った。
デュランダル議長の提案はこうだった。
他の戦艦は、臨戦態勢のため、出払っているが、たまたまここに用事があった小型の戦艦が停泊している。それに乗って、アーモリーワンへと向かう。この小型の戦艦は大気圏突入能力がない。だから、そこで、明後日進水式をする予定だった新型艦『ミネルバ』に乗りかえて、オーブへと向かうという筋書きだ。
「あと五分で、ちょうど連合側の要求回答期限が迫る。当然、プラントは拒否するだろうから、
開戦だな」
アレックスが、時計を見た。
「本当に大丈夫かしら?そんなときに、戦艦で地球へ行こうなんて」
舞台女優よろしくオーバーなリアクションで、アレックスに近づく。
「でも、待っているわけにはいかないさ。そうこうしているうちに、
オーブが軍を出さなければいけなくなってしまうだろ―――しかし、いつまでついてくるんだよ、あんたは?」
シンの言い草にミーアは、目を吊り上げた。
「ひっどーい!!! アレックス! この子注意してよっ! 口の聞き方がなってないって」
「何だよ『この子』って、同じ年だろ」
「違うは、私は『ラクス・クライン』なの、あなたより4歳年上なんだからっ」
「まあまあ、2人とも。キャンベル嬢は、案内役なんだ。でも、ここは危ないから、もう、この辺で引き返した方が……」
「嬉しいっ。心配してくれるのね」
「いや、そういうわけじゃあ」
階段を下りていくと、トラックが横切った。巨大な荷物をのせ、戦艦の中へと入っていく。この作業を行うために、戦艦はここにきたのだろうか。
シンが首をかしげていると、戦艦の陰から一人の男が姿をあらわした。
浅黒い肌に金髪の男。身長は標準より高めだ。
「あんた達のことか、この戦艦に乗せてほしいって議長がいってきたのは」
頭をかきながら、めんどくさそうな怠惰な声を出す男にシンはむっと来て、何かいおうとしたそのとき、うしろでアレックスが素っ頓狂な声を上げた。
「おまえ? ディアッカ! ディアッカ・エルスマンじゃないか」
「知り合いなんですか?」
「まあな、な? アスラン」
「どいつもこいつも、ばらしやがって・・・・・・」
アレックスは頭を抱えた。
「あの……、エルスマンって。ミリアリア・エルスマンっていう人と親戚なんですか?」
「何、お前、ミリアリアのこと知ってんの?」
「ちょっと、オーブでお世話になったことが」
シンが営倉から脱出しようと試みたとき、声をかけたひとが確かそう名乗っていた。
カールした茶色の髪をもつ明るい女性を思い出しながら、目の前の男性を見た。
「実は、この前結婚したばかりなんだよ。ハハハ―――おまえは、どどどうなってんだよ」
ディアッカは、照れ笑いを浮かべ、話題をそらそうとアレックスの肩を叩く。
「俺? 俺は別に……」
迷惑そうに顔をしかめ、ため息をつく。と、ミーアが憤然と後ろからやってきて間に割って入る。
「アレックスとは、もちろん、この『ラクス・クライン』が結婚しますわ。だって、婚約者ですもの」
「ラクス・クライン? 何でこんなところに。ミリアリアから行方不明って聞いたはずだけど」
「彼女はただの偽者ですかよ。この人は置いておいて、とにかく早く乗り込ませてください」
「ああ、そうだな。お嬢さんは早く帰ったほうがいいぞ。ここは危険だ」
「私、一緒に行きます」
ディアッカがもと来た道へと押し戻そうとすると、ミーアはその手を払って毅然と言い放った。
「わがままもいいかげんにしろよ!」
シンが言い放った言葉も意に介さずといった雰囲気で、ミーアはタラップをあがっていった。
「おいおい。困ったな、こりゃあ」
ディアッカは頭をかきながら、後を追った。
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