
2007-05-10 Thu 10:52
「こんなところがあったのか」 「あれが、今回俺達が乗っていく戦艦?」 デュランダル議長の提案はこうだった。 「まあな、な? アスラン」 「あの……、エルスマンって。ミリアリア・エルスマンっていう人と親戚なんですか?」 シンが営倉から脱出しようと試みたとき、声をかけたひとが確かそう名乗っていた。 「実は、この前結婚したばかりなんだよ。ハハハ―――おまえは、どどどうなってんだよ」 「彼女はただの偽者ですかよ。この人は置いておいて、とにかく早く乗り込ませてください」 「わがままもいいかげんにしろよ!」
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2007-04-23 Mon 22:11
「待ってくださいなー」 「待ってくれ」 「うわっ」 「おーい、ステラー何してんだよ。遅いぞー!」 「ステラ……」 Aパートに続く。 |
2007-04-02 Mon 08:11
「君の選択肢は二つ、今ここで死ぬかこれにサインをして生き延びるか――もっとも、自由になどしないけどね」 「アスハ代表ッ!」 「君達は、オーブに雇われたものだ。僕は、このオーブのために無能なお飾りの代表を辞職させようとしているだけさ! 何が悪いっ!」 「今、君を命がけで助けるやつはオーブにはいない」 カガリは肩を震わせいっそう高い笑い声を上げるユウナを見上た。そして、おもむろにペンをつかみ、自分のサインを書きなぐった。 ※ 白いドーム状の屋根が幾重にも折り重なった宇宙港の入り口を出ると、ターミナルになっており、多くの車が行きかっていた。アプリリウス市は、プラントの中心地であり、政治、経済活動の中心地である。いろとりどりの服を着た人たち波に、シンは、戸惑うばかりであった。 「こんにちはー! アレックスさん、シンさん」 甲高い声に振り向くと、人を掻き分けラクス・クラインが近づいてきた。 ラクスはそんなことは意に返さず、突然アレックスに抱きついてきた。 「私の名前はミーア・キャンベル。行方不明になったらクス・クライン議員の代理をやってますの」 「きみは、いいのか? それで」 「それでは、ここで緊急ニュースをお伝えします」 「何だって、戦争が始まる?」 集まった人々からは、悲鳴に近い罵倒の声が飛び交っていた。 「急ごう、シン。戦争が始まる前に、議長のサインを持ち帰らなくては」 ※ 「さすがだな、キラ」 「まだ、高熱があるは、傷もまだ……」 「でも、驚いたわ。あなたが血まみれになってこの家までやってきたときには」 起き上がって頭を下げようとしたキラをマリューは慌てて押しとどめた。 「そのことなんだが――。俺もそう思って連絡を取ったんだが、取り次いでもらえなかったんだ。こんなことは今までになかったんだがなぁ」 「おかしいわ。ラクスさんといい、カガリさんといい。何か悪い感じがするわ――」 ※ 行政府にたどり着いた車を迎えたのは、ボブカットの女性だった。 三十分ほど立ったとき、窓から見える巨大スクリーンにミーアの姿が、映し出された。プラントには、町のいたるところにこのようなスクリーンがあるらしい。行政府の前の大通りを歩いていた人々が足を止め、 その画面を見上げた。もちろん、応接室の2人も片手にカップを持ちながら窓辺に立った。 「皆さんっ! こんなことが許されるのでしょうか。 ユニウスセブンの落下の悲劇により多くの人命が失われました。これは、我々の同胞コーディネーターの起こした所業です。しかし、私達の政府はこの行動を支持していません。そればかりか、被害にあった地域に対する復興支援をしていました。それなのに、連合国は、プラントに対して無理難題を押し付け、無理やりに先端を開こうとしています」 悲痛な表情を作った女性の叫びに、市民達は呼応した。 「そうだ! 汚いぞ。ナチュラルめ!」「連合に屈するな!」 「やれやれ、とんだ。ラクス・クラインだな」 「プラントの皆様に残念な決断をお伝えしなければなりません。今まで私は穏健派として支持を受けてきました。戦争は極力回避したい。しかし、今、このような連合の一方的な宣誓を前にしたとき、私はそれを黙って受け入れるわけにはいかない。 「戦争が始まるのかな」 「演説が終わりましたので、執務室へご案内します」 ※ 「オーブ首長国特使 アレックス・ディノ入ります」 秘書の手によって高度な彫刻が施された重厚な扉が開かれるとそこにはデュランダル議長のすがたがあった。脇には、ラクス・クラインの代理、ミーアキャンベルが控えている。 「遅くなってすまなかった。早速、条約の内容を見させてほしい」 「残念だが、世界はまた、戦争の渦に飲み込まれそうだ。これが、オーブの中立の一助になればいいのだが……」 「少々、変則的だがね。今は一刻を争う……。急ぎたまえ、戦争が始まってしまう前に!」 「シン、いくぞ」「ええ」 続く NEXT PHASE5 閉ざされた道 |
2007-03-09 Fri 21:13
「すまない。私もこれ以上ここにとどまっているわけには行かなくなったのだ」 ※ 数日後、オーブ軍基地食堂。 食堂はオーブ兵達で埋め尽くされている。ユニウスセブンが落下したとはいえ、被害のなかったオーブの日常はいつもと代わりのないものだった。訓練を終えた兵士達が、談笑しあっていた。 隊ごとに指定の座席があるせいで、シンは、アレックスのはす向かいに座らなければならなかった。黙々と食べ物を口に運んでいると、ハイネ一佐が近寄ってきた。 「カガリ・ユラ・アスハ代表がお呼びだ」 「いったい何なんですか?」 ※ 10:00 オーブ 「それでは、よろしく頼んだぞ」 シャトルが離陸した。今までの人生の大半をすごし、喜びも悲しみもしみこんだ大地から離れていく。軍の施設がもけいのように小さく見えるようになり、雲でところどころをさえぎられ、やがてオーブの国全体の輪郭があらわになった。地面よりも、宇宙空間が近くなったとき、目に入るすべての大地が緑や茶や白染まっていた。 ※ 宇宙に吸い込まれていくシャトルを見上げ、カガリは目を細めた。自分の希望を託した者が離れていくのを眺めながら、自分の父親のことを思い返さずに入られなかった。 ――父様は、間違っていたのだろうか―― 無欠開城をすれば、たしかにシンの家族は死ななかったかもしれない。 ふと、背後に立つ人の気配を感じ、カガリは振り返った。国民服を着たユウナが、スーツの襟を直しながら、歩みよっていた。 『私、カガリ・ユラ・アスハは、健康上の理由により、本日をもってオーブ首長国連合代表の座を辞し、それを現副代表であるユウナ・ロマ・セイランに譲る』 「こんなものっ!」 しかし、この状況では、カガリは威勢を張ることしかできなかった。 Bパートにつづく |
2007-03-08 Thu 23:24
高級な家具がしつらえてある部屋の一室で、二人の男が話し合っている。厚いカーテンが引かれ、今の時刻すらあやふやだ。 「しかし、今各国は復興に忙しい。『戦争』どころではないんだ」 椅子に座っている金髪の男は、こぶしを丸め苦々しげに言い放った。立ち歩いている短髪の男は、それを鼻で笑った。 「そうですか? では、あなたは全世界をプラントに支配される未来を望むというのですね」 「いや、そんなことは言ってはいない」 こめかみに流れる汗をぬぐって、声を振り絞る。 「いっているのと同じです。プラントはNJCを持っています。それはいつでも、核を放てるということだ。つまり、今はやらないだけで、その気になればいつでもやれるのです。我々の頭上で常に我々の命運を握っているのです。それでもいいというのですか?」 コーディネーターの脅威などすでにわかっている事だ。しかし、今改めて言われると、強い衝撃を感じた。 金髪の男は、蛇ににらまれたかえるのように、体が固まっていた。自分の地位すらこの男の前では何も役に立たないのだと思い知らされる。 「しかし、資金とて、無限ではない」 「その点はご心配なく、わがロゴスはできうる限りの援助を惜しみません」 最後の抗いの声も、あっけなくねじ伏せられた。 「わかった――」 ※ 「見事です。ジブリール閣下」 部屋を後にした短髪の男に、部下でロゴスの一員でもあるリェン・カーが追いすがる。 「ありがとう、しかし、たいしたことではない」 ジブリールは、早足で自室に入ると、赤いビロードのいすに深々と腰掛け足を組んだ。足元に、黒猫が二匹まとわりつく。ジブリールの愛猫だ。 「恐怖というのは、人を盲目にさせる。それの前にすれば、理性など薄いガラスのように脆いものだ」 猫を撫でながら、満足そうに言った。 「それにしても、あの事件は我々にとって、僥倖でしたね。やっと、支援していたテロリストどもの重い腰を上げさせてくれた」 「君の言っているのは、シャトル襲撃事件のことかね、リェン」 「は」 「まったくだ。どこの酔狂なものがシャトル襲撃などたくらんだものやら。我々だとて、プラント最高機密として扱われたシャトルのコースを割り出すことは不可能だったというのに」 「本当ですね。しかし、誰がたくらんだことであれ、これからは我々の時代の幕開けということになりそうですね」 「そのようだな」 |
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